■トップインタビュー
取材年:2018年
水産県長崎の象徴、長崎市京泊の長崎魚市場。ここで独占的に卸売りを行っているのが長崎魚市株式会社です。多田聖一社長、こうして見渡すと、本当に広いですね。
「面積は22万平米で日本一です。それに東シナ海や五島灘など世界有数の好漁場に恵まれており、延縄や底曳き網、沿岸漁業などで漁獲される魚種は250種類と、これも日本一。四季を通じて水揚げがあり、高級魚が多いことも特長ですね。私どもは、漁を行う生産者から魚を預かり、セリを行って仲買さんに売る、魚の公正な取引と安定供給が役割です」
セリは朝5時から、ということは出社は?
「早い職員で朝2時ですね。漁を終えた生産者の船が着き、水揚げされた魚を調べてセリの準備をし、セリが終わるとすぐに精算して生産者には即日現金で支払います。10時過ぎには一仕事終わります。私も長いこと昼夜逆転の生活をしてきましたが、最初は眠くても、体は慣れるものですよ。それに、昼間の明るいうちに終わりますので、趣味や買い物、子供と公園で遊んだりと時間を有効に使っている社員もいます」
それは魅力ですね。ところで日本の漁獲高は最盛期と比べ、落ち込んでいると聞きますが、実際どうなんでしょう。
「うちも1990年頃のピーク時に比べると水揚げ量は半減しています。しかしそれを予測して商事部門を作り、世界各国から、サケ・マス・エビ・凍魚・塩干魚を仕入れて販売力を高め、地元仲買さんへの供給を維持する工夫をしています。大切なのは、漁協や生産者からなるべく多くの魚をうちの市場に持ってきてもらうことです。そのために「こんな魚が欲しい」といった仲買さんの要望を生産者に伝え、うちがよい取引ができることをアピールする『集荷』の業務が欠かせません。当社はこのような営業力のある20~30代が多く活躍しており、さらに求めています」
魚市場は、卸、荷役、運送、加工、製氷、冷蔵庫など多くの産業があります。長崎魚市場の存在が、水産県長崎を支えているのですね。
PROFILE
多田聖一さん
代表取締役社長
長崎市出身・福岡大学商学部卒業後、1983年入社・営業本部長を経て、2021年より現職。長崎魚市場そのものの歴史は古く、1624年~43年の寛永年間に長崎市金屋町に創設されたのが始まりとされます。その後変遷を経て、1914年にトロール漁業の発達に伴い尾上町に移転、1989年には新長崎漁港(京泊)の開港とともに魚市場が移転、開場されました。
■社員インタビュー
取材年:2018年
朝は確かに早いのですが、午後はまるまる自由に使えるので有効活用できます
山岡友弥さん
「生産者が納得する値段で売れて、仲買さんも納得する値段で買えるのが理想。生産者に『今朝のあの魚は○○○円で売れましたよ』と伝えて喜んでもらえたとき、この仕事のやりがいを感じますね」と山岡さん。
山岡友弥さんは受託販売部門の「赤物第一部」営業職。赤物とは?
「近海ものです。アマダイ、アカメ、レンコダイ、ガッツ……」
赤い魚が多いから総称が赤物なんですね。山岡さんの1日を教えてください。
「今日の出勤は朝3時でした。水揚げされた魚がセリ場に並ぶので、荷主さんや何の魚がどれだけ出荷されたかを浜帳というノートに記録していきます。5時からは仲買さんが集まりセリが始まります。僕はまだセリ人の資格を持っていないので、セリ人の後ろについて誰がいくらでセリ落としたかという結果を浜帳に書き入れます。セリが終わると、浜帳をパソコンに入力して、仕切書を作ります。それが9時か10時くらいまで。同時に、生産者に電話して、預かった魚がいくらで売れたかを伝えて、また明日もお願いしますという集荷の業務を行います。これは職員それぞれ、生産者や漁協の担当を割り当てられています。それらが終わるのが11時くらいで、退社します。昨日は雨で漁に出ない漁師さんもいたから、遅めの出社でした。明日は忙しくなりそうなので少し早め。その日の入荷量によって仕事量も変わりますね」
すると午後はまるまる好きなことができます?
「はい、昼寝とか。あと釣りはよくしますね」
朝から魚と付き合っているのに、遊ぶ時も釣りですか?
「あ、それは別なんです(笑)」
セリなど、仲買さんたちの真剣勝負で怒鳴られることもあります?
「と思うでしょう? これがわりとそうでもなくて。もちろん記録を間違えたりすると怒られます。でも、だんだん顔なじみになり、今では可愛がってもらえます。生産者の方々に集荷の電話をかける時も、仲買さんが欲しい魚種を伝えたり、『そろそろカツオが始まるよ』といった漁の情報をもらったり。『○○円くらいで落としますから、うちに出してください』と、上手に言えるようになるのが僕の課題ですね」
季節の移り変わりを魚種で感じられる面白さ、それがこの仕事の醍醐味なのだそうです。
朝は確かに早いのですが、午後はまるまる自由に使えるので有効活用できます
長崎魚市株式会社
山岡友弥さん
「やっぱり魚が好きだから」好きを仕事にする強さ
海に囲まれた長崎は釣り天国。山岡さんも子どものころから釣りばかりしていたのだそうです。「今ならミズイカやキスが釣れますよ。魚市での仕事が終わって自宅までも海沿いの道を帰りますし、結局このあたりで釣りますから、なんか1日中海にいる感じですね」
実は一度は県外に出て、建築関係の仕事に就いていたといいます。
「結局、長崎に戻ってこちらに就職しました。魚が好きなのと、やっぱり長崎の人間だから水産業に携わりたかった」
もう一つ、山岡さんの休日の楽しみといえば高校時代から続けている野球です。
「仲間とチームを作ってリーグに加わり、日曜日ごとに試合しています。早朝野球? まさか! 早朝は仕事の時間ですよ(笑)」
豊富な魚種は四季で変わります。長崎で水揚げされ、セリにかけられた高級魚が東京などの消費市場に送られていきます。
■企業概要
長崎魚市株式会社
所在地 | 長崎市京泊3丁目3-1 |
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電話番号 | 095-850-3600 |
ホームページ | https://www.nagasaki-uo.co.jp |
設立 | 1948年 |
代表 | 多田聖一 |
資本金 | 1億円 |
社員数 | 全従業員 193名 うち正社員73名(男性56名、女性17名) |
初任給 | 大卒220,552円、高卒197,764円(基本給+深夜手当含む) |
休日休暇 | 日曜及び、お盆・年末年始・休市日。年次有給休暇・その他(慶弔など) |
福利厚生 | 退職金制度、財形貯蓄、永年勤続表彰 ほか |
インターンシップ 受け入れなど |
インターンシップ受け入れ/無し 大学生アルバイト受け入れ/無し(※職場見学随時受付中) |
採用担当者連絡先 | 095-850-3600(人事課採用担当) jinji.saiyou@nagasaki-uo.co.jp |